は じ め に
 

教育にとって、最も重要であるのが人とのかかわりです。子どもと親(家族)、子どもと教師、子どもと地域の大人、子どもと子ども…。子どもたちは、自分と他人とのかかわりの中で、生活に必要ないろいろなことがらを学び、力として蓄えていきます。そして、人と人を繋ぐものが「言語」です。言語は、知的活動やコミュニケーション、感性・情緒の基盤になるものです。言語を意識した教育活動の重視が、この4月から実施される新学習指導要領への第一の改善事項にあげられています。
  私たちは、“感じたり考えたりしたことを、自分の考えとしてしっかり持ち、自信を持って友だちと伝え合う子ども”の育成を目指し、「言語力の向上」をキーワードに授業改善、言語環境の整備、読書指導の充実に取り組んできました。過去数年の研究成果の上に立ち、子どもに身につけさせるべき基礎・基本の力「聞く・話す」に焦点を当て、『あすなろっ子の聴き方、話し方』という全学年共通の指導指針を設けて「聞く力・話す力」の育成に取り組んできました。また、『国語力系統表』に基づいて、「聞くこと・話すこと・読むこと・書くこと」の基本技能を学年の発達段階に応じて繰り返し指導してきました。特に今年度は、伝え合うための基礎的な技術の習得興味・感心の向上支持的風土の育成の3側面を学習の場の中心に据え、実践を積みました。
  相手の思いをわかろうとして聞くこと、自分の思いが伝わるように話すことは、相手を大切に思う人間関係に裏打ちされた学級集団、学年集団においてのみ実現することです。また、「聞きたい。」「伝えたい。」という思いは、“安心して自分の思いを語れる”雰囲気に満ちた場においてこそわき上がる感情です。そういう意味で、今年度の研究の視点に支持的風土という学級づくりの視点を加え、授業改善の一要素に明確に位置づけたことが、研究の深まりにつながったと思います。

子どもたちは、私たちの日々の実践を見て、感じ、行動し、成長の糧にしていこうとしています。私たち教職員は、教育のプロとして、目の前にいる子どもたちの課題を的確に把握し、目指している子どもの姿に近づくよう研究・研修を深めていかなければいけません。学びの基本(学習習慣)を身につけることを一点集中徹底型目標に据え、学力向上に取り組む私たちの指導の方向性は正しいと確信していますが、さらに、心の潤いと仲間づくりに資する教育実践について今後も研鑽を積んでいきたいと思います。
 ご批正をよろしくお願いします。

                         平成23年(2011年)3月
                               湖南市立菩提寺北小学校
                               校長  石 原 慶 子