人の一生は重荷を負うて遠き道を行くがごとし。急ぐべからず。
不自由を常と思えば不足なし。こころに望みおこらば困窮したる時を思い出すべし。
堪忍は無事長久の基、いかりは敵と思え。
勝つ事ばかり知りて、負くること知らざれば害その身にいたる。
おのれを責めて人をせむるな。
及ばざるは過ぎたるよりまされり。



 この意味は、おおよそ次のようなものです。

 人の一生というものは、重い荷を背負って遠い道を行くようなものだ。急いではいけない。
 不自由が当たり前と考えれば、不満は生じない。
 心に欲が起きたときには、苦しかった時を思い出すことだ。
 がまんすることが無事に長く安らかでいられる基礎で、「怒り」は敵と思いなさい。
 勝つことばかり知って、負けを知らないことは危険である。
 自分の行動について反省し、人の責任を攻めてはいけない。
 足りないほうが、やり過ぎてしまっているよりは優れている。

徳川家康の遺訓