「いらっしゃいませ」「ありがとうございました」。飲食店で職場体験をしたときに、一番大切で欠かせない言葉だと感じました。「いらっしゃいませ」はお客さんとの出会いで初めて交わす言葉、「ありがとうございました」はちょっと大げさだけど、別れの言葉。短いけれど心のこもった挨拶の言葉だと思います。でも、言葉だけでなくそこにはあるものが込められていることを体験しました。

私は以前、家での食事の時、たまに「いただきます」や「ごちそうさま」を言い忘れることがありました。その度に親から、「いただきますは?」と注意され、「なんでわざわざ言わなあかんの、めんどうくさい」と思っていました。でも、職場体験をしてからはその気持ちが少しずつ変わっていきました。

職場の方から繰り返し繰り返し言われたこと、それは『あいさつは必ずする』。そんなに大きくなくていいけど、相手にはっきり聞こえるように、そして笑顔を忘れないことでした。いきなり言われ、無理な注文だと思いました。初日は職場のルールややり方を覚えるので精一杯、接客の時も口が言うことを聞きません。口ごもるだけで一日が終わりました。二日目も緊張感から声が出ず、自信がなくなっていきました。そんな私を見かねて女将さんが「とにかく大きい声を出したらいい」とアドバイスをくださいました。

三日目はまず声をだすように心がけました。そんな時「ありがとうございました」と言ったとき、「おいしかったよ」「頑張っているね」と声をかけてくださったお客さんがありました。すごく嬉しい気分になり、その言葉がすごく励みになって、声もどんどん出せるようになりました。自分が発した言葉によって、相手が返してくれる、それによって気分が変わってくることに気づかされました。四日目にしていたお皿洗いや片付けの時、お店の方から「丁寧だね」とか「ありがとう」と声をかけてくださってこのことを実感しました。疲れも吹き飛ぶほど嬉しくなったのです。

この職場体験をとおして、自分から声をかけることによって返してくれる人がいるということ、返してくれるとすごく嬉しくなり、それが励みになってどんどんやる気につながっていったこと、言葉の持つ魔力について感じさせられました。

朝起きたときに以前は母から声をかけてくれていたのですが、今は自分から「おはよう」の挨拶をするようになりました。そこから母との会話もつながっていきます。家族とだけでなく、近所の人とも挨拶をするようになりました。「おはようございます」と言えば「おはよう」と返ってくる、そんなテンポの良い会話で気分爽快になれます。言葉は本当に不思議です。

これらの体験から、「言葉」について考えされられたことがたくさんありました。言葉を発することの大切さ、そしてその言葉を返されることによって生まれてくる気持ちの変化。言葉は「魔法」だと感じました。その言葉は人間関係づくりにも重要なものだと思います。それはコミュニケーションです。それもただ話をするのではなくて、相手をしっかり見ることです。目を見るとかだけではなく、その人がどんな気持ちなのかが分かるようにするのが大事だと思います。よく、相手の目を見て話しなさいと言われます。それは自分の言ったことが相手にどんな風に伝わっているか、自分が言ったことに対して相手が嫌な気持ちになってないか、を考えながら話すことが大事だからではないでしょうか。これができてこそ本当のコミュニケーションだと思います。そのコミュニケーションのきっかけとなるのが挨拶だと思います。挨拶からコミュニケーションへと広がります。その挨拶を私は相手をしっかりと見つめ心を込めてしていきます。